和食のままできる、脳のための食べ方 ― MIND食を日本の食卓に置き換える

予防医学外来
日本の食卓は、
もともとMIND食に近い

「歳をとっても、頭ははっきりしていたい」。そう考えたとき、食事に何かできることはあるのか。この10年ほど、認知機能との関連が繰り返し検討されてきた食事パターンに「MIND食(マインドしょく)」があります。

米国で作られたものなので、そのまま持ち込むと「ベリーを週2回」「オリーブオイルを主に使う油に」と、続けにくい話になりがちです。けれど中身を見ていくと、日本の食卓はもともとMIND食にかなり近いことがわかります。

このページでは、和食のどこがすでに基準を満たしていて、どこが空いているのかを整理します。

2015年に米国ラッシュ大学の研究チームが提唱した食事パターンです。名前は Mediterranean-DASH Intervention for Neurodegenerative Delay の頭文字で、脳の老化を遅らせることを目的に設計されました。

心臓病予防で実績のある「地中海食」と、血圧改善のための「DASH食」を土台に、脳に関係すると考えられる食品だけを絞り込んだのが特徴です。果物全般ではなく「ベリー類」、野菜全般ではなく「緑黄色野菜」というように、対象が具体的に指定されています。

MIND食の定義

MIND食とは、この14項目のこと

MIND食は「野菜を多めに」「魚を食べましょう」といった心がけではありません。食品の項目と、それぞれ食べる頻度の基準として、数字で定義されています。ここがMIND食の中身のすべてです。グラム数を量る必要はなく、見るのは頻度だけです。

研究で「MIND食の遵守度が高い」というのは、各項目を満たしているかを1項目1点(中間なら0.5点)で数え、合計点が高いという意味です。増やす側を食べているほど、控える側を食べていないほど、点が上がります。

増やす(推奨)― 9項目

食品 基準となる頻度
緑黄色野菜(ほうれん草・小松菜など) 週6回以上
その他の野菜 毎日1回以上
ベリー類 週2回以上
ナッツ類 週5回以上
豆類・大豆製品 週4回以上
魚(揚げ物以外) 週1回以上
鶏肉(揚げ物以外) 週2回以上
全粒穀物 毎日3回以上
オリーブオイル 主に使う油にする

控える(制限)― 5項目

食品 基準となる頻度
バター・マーガリン 1日大さじ1未満
チーズ 週1回未満
赤身肉・加工肉 週4回未満
ファストフード・揚げ物 週1回未満
菓子類・スイーツ 週5回未満

これらは米国の食習慣を前提に作られた基準です。日本の食卓から見ると緩く感じる項目(菓子類・赤身肉など)もあります。満点を取ることが目的ではありません。(後述のとおり、研究で差が見られたのは中程度に守っていた群でも同じでした。)この表は、いまの食事のどこが空いているかを見るための物差しとお考えください。

原著のMIND食は15項目で、もう1つは「ワイン 1日1杯まで」です。本記事では扱いません。

なぜ「ワイン」の1項目を外すのか(3つの理由)

1. MIND食の研究者自身が、後の試験でワインを外している

2015年の提唱時、ワインは15項目の1つでした。当時のデータで、適量のワインと認知機能の良好さに関連が見られたためです。しかしその後に行われたMIND食の介入試験では、安全性を理由にワインが外されました(Harvard T.H. Chan School of Public Health, The Nutrition Source)。外部の誰かが注文をつけたのではなく、MIND食を作った側が自分で下ろした項目です。

2. 「少量の飲酒は体に良い」(Jカーブ)は、近年の再解析で否定的な結果が出ている

107件のコホート研究・約480万人をまとめて再解析した研究が、比較の土台に問題があると指摘しました。「飲まない人」のグループに、過去に大量に飲んでいてやめた人や、体質的にアルコールを受けつけない人が混ざっていたのです(abstainer bias)。この偏りを補正すると、少量飲酒による死亡率の低下は消えました(Zhao J, et al. JAMA Netw Open. 2023;6(3):e236185)。

いっぽう2025年の米国科学アカデミー(NASEM)の報告は、中等度の飲酒と総死亡率低下の関連を「中程度の確実性」で認めており、総死亡率については評価が割れているのが正確なところです。ただしがんについては見解が一致しており、2025年の米国公衆衛生局長官による勧告は「リスクは少量から上がり、ゼロになる下限はない」としています。

脳の健康のために食事を整えようという文脈で、評価の割れている項目を1つだけ勧める理由がありません。

3. ポリフェノールが目的なら、ワインである必要はない

まず言葉を整理します。ポリフェノールは、植物に含まれる成分の総称で、何千種類もあります。そのうち赤ワインで注目されてきたのが「レスベラトロール」、ベリー類で注目されているのが「アントシアニン」(ベリーの色そのものの成分)です。どちらもポリフェノールの一種ですが、別々の成分です。

赤ワインのレスベラトロールは、グラス1杯あたり0.2〜2mg程度しか含まれていません。効果が報告されている臨床試験で使われた量は1日75〜500mgで、桁が2つ違います。ワインを飲んでこの量に届くことはありません。

いっぽうベリー類は、MIND食がもともと独立した項目として持っています。 ブルーベリー・イチゴをよく食べる人ほど認知機能の低下がゆるやかで、加齢に換算しておよそ2.5年ぶんの差にあたったという報告があります(Devore EE, et al. Ann Neurol. 2012;72(1):135-143/米国の看護師16,010名を対象とした追跡研究)。食品として食べた状態で関連が報告されているのは、こちらです。

記事の骨格

日本の食卓に当てはめると

上の表は米国で作られたものですが、当てはめてみると、14項目のうち9つは、日本の食卓がもともと埋めています。

MIND食の14項目 日本の食卓では
豆類・大豆製品 ◎ 埋まりやすい(納豆・豆腐)
魚 ◎ 埋まりやすい
鶏肉 ◎ 埋まりやすい
その他の野菜 ◎ 埋まりやすい
赤身肉・加工肉(控える) ◎ もともと多くない
チーズ(控える) ◎ もともと多くない
バター・マーガリン(控える) ◎ もともと多くない
ファストフード・揚げ物(控える) ○ おおむね収まる
菓子類(控える) ○ おおむね収まる
緑黄色野菜 ✕ 週6回には届きにくい
ベリー類 ✕ 食卓にほとんど登場しない
全粒穀物 ✕ 白米中心だと0回
ナッツ類 ✕ 間食の習慣にない
オリーブオイル ✕ 主に使う油ではない

空いているのは5つだけです。しかもそのうち2つは、買うものを変えるだけで埋まります。

日本の食卓が強いところ

すでに埋まっている

豆類(週4回以上)

納豆、豆腐、豆乳。納豆を週4回食べれば、それだけで基準を満たします。MIND食の項目のなかで、日本人がもっとも有利なのがここです。

味噌汁は大豆由来ですが、味噌大さじ1杯に含まれる大豆は1食分(調理済みで約80g)に遠く及びません。味噌汁は「豆類1回」には数えません。

豆腐・納豆・味噌・大豆を並べたところ

魚(週1回以上)

サバ、イワシ、サケ、アジ。週に1回で基準を満たします。 揚げ物は数えません。

緑黄色野菜を食べる「型」がある

ほうれん草や小松菜のおひたし、ごま和え。副菜として食べる形が、すでに食文化のなかにあります。ただし頻度は不足しがちです(次項)。

空いている5つ

足りないのは、この5つ

習慣を足す 3つ

1. 緑黄色野菜 ― 週6回以上

基準はかなりの高頻度です。副菜が1品だけの日が続くと届きません。冷凍のほうれん草・小松菜を常備しておくと、味噌汁や卵に足すだけで回数が稼げます。

ほうれん草・小松菜・ケール・ブロッコリー・モロヘイヤなどの濃い緑の葉物野菜

2. ベリー類 ― 週2回以上

日本の食卓にはほとんど登場しない項目です。ここは意識して足す必要があります。冷凍ベリーが現実的で、ヨーグルトに乗せる形がいちばん続きます。冷凍しても、細胞の構造が壊れることでポリフェノールが取り出されやすくなると報告されています。

霜のついた冷凍のブルーベリー・ラズベリー・スライスしたイチゴ

3. 全粒穀物 ― 毎日3回以上

白米だけだと0回のままです。もち麦や雑穀を3割混ぜる、十割そばを選ぶ、朝をオートミールにする。主食を替えるのがいちばん効きます。

もち麦の粒が見える麦ごはんの茶碗

買うものを変えるだけ 2つ

4. オリーブオイル ― 主に使う油にする

基準は「主に使う油にする」なので、炒め物とドレッシングを置き換えれば満たせます。 新しい習慣は要りません。

5. ナッツ類 ― 週5回以上

日本の間食の習慣にはあまりありません。買い置きのおやつを、素焼きのくるみ・アーモンドに替えるだけで埋まります。塩や砂糖がついていないものを選んでください。

だしを効かせるのも、あわせておすすめします。昆布・鰹節・干し椎茸のだしが効いていると、塩分を減らしても満足度が保てます。焼き魚や味噌汁をやめる必要はありません。調味料として足す塩を減らせる、という意味です。減塩はMIND食の項目ではありませんが、日本の食生活では実際的な意味があります。

研究でわかっていること

どこまでわかっているか

米国の高齢者923名を平均4.5年追跡した研究では、MIND食の遵守度が高い群は、低い群に比べてアルツハイマー病の発症率が低いという関連が報告されています。完璧に守っていた群だけでなく、中程度の群でも差が見られた点が特徴で、続けやすさに意味があることを示しています(Morris MC, et al. Alzheimers Dement. 2015;11(9):1007-1014)。

別の研究(960名・平均4.7年の追跡)では、認知機能の低下する速さを比べたところ、遵守度の高い群は低い群に比べて、加齢に換算しておよそ7.5歳ぶんの差にあたる緩やかさだったと報告されています(同 2015;11(9):1015-1022)。

一方で、604名を3年間比べた大規模な比較試験では、認知機能に統計的な差は示されていません(Barnes LL, et al. N Engl J Med. 2023;389:602-611)。アジア系を対象とした解析でも、明確な関連は確認されていません。現時点で言えるのは「MIND食を続ければ認知症を防げる」ではなく、「食事の質を長く保つことが、脳の健康と関係している」というところまでです。

からだ年齢ドック

当院でできること

ここまでは、食事の「内容」の話です。何を足せばいいかは、もうお分かりいただけたと思います。

ただ、同じものを食べても、体の中で起きていることは人によって違います。 血糖の上がり方、血管のしなやかさ、酸化や糖化の進み具合、炎症の程度 ―― これらは、食事の記録からは見えません。きちんと食べているのに数値が動いていない方もいれば、思ったより余裕のある方もいます。

ひかりクリニック 自由診療のからだ年齢ドックは、そこを測ります。血管・骨・筋肉・ホルモンなど複数の指標から身体の状態を確認し、2回目のご来院(結果説明)で、医師が測定結果を見ながら、食事についてもあわせてご説明します。 いまの食生活と結果を突き合わせたうえで、続けられる形をご提案します。

食事を変えるかどうかではなく、自分がどこから手を付けると効くのかを決めるための検査だとお考えください。

からだ年齢ドック

55,000円(税込)

2回のご来院(1回目:測定/2回目:結果説明と食事のご相談)

食事についてのご説明は結果説明に含まれます(追加の費用はかかりません)

完全予約制

測定・結果説明・食事のご説明は、いずれも抗加齢医学を専門とする医師が担当します。

食事の見直しは、病気の治療の代わりではありません。腎臓病・糖尿病・脂質異常症などで食事制限を受けている方は、自己判断で実践せず主治医にご相談ください。また、ここで紹介した研究が示しているのは集団における関連であり、個々の方に同じ結果が生じることを保証するものではありません。

ご予約・お問い合わせ

ひかりクリニック 自由診療

大阪府吹田市春日1丁目5番35号 101号
電話:06-6170-5761/予約専用:0120-632-862
診療時間:月〜金 9:00〜12:00 / 13:00〜17:00(土・日・祝 休診)

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